
写真提供:©Alexander Pohl/Alto Press via ZUMA Press/共同通信イメージズ ※Germany Rights Out
リーダーが指示や鼓舞をしなくても、部下が自発的に動き、チームに活力と価値をもたらす――そんな仕組みは、どうしたら構築できるのか。『 無言のリーダーシップ』(田尻望著/SBクリエイティブ)から内容の一部を抜粋・再編集。高付加価値を生み出すキーエンスで著者が学んだ、革新的なマネジメントの神髄に迫る。
面倒見が良すぎるリーダーは、対話や作業で疲弊しがちだ。効率的に自走する組織を築くために、積極的に導入すべき「仕組み化」の要諦とは?
本稿は「JBpress Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2025年9月29日)※内容は掲載当時のもの
仕組みがなければ一生しんどい

『 無言のリーダーシップ 』(SBクリエイティブ )
――忙しいリーダーこそ仕組み化に時間を使え
多くのリーダーが仕組み化に着手できない最大の理由は、「とにかく忙しすぎる」ということだ。特に、個人目標を達成しながら、部下からの相談や進捗管理、問題発生時のフォローまでこなすプレイングマネージャーは、日々やることが山積みで、土日返上で働いている人も少なくないだろう。
リーダーは、「いつかは仕組み化しなければ」と思いつつも、日々のノルマに追われ、いつの間にか「仕組みは後回し」という悪循環に陥る。
本章では、リーダーの負担を減らしつつ成果を上げていくための具体的な仕組みを紹介していく。前章までのステップを踏んだチームでは、すでに仕組みを受け入れ、運用していく土壌が育っているはずだ。どれも比較的取り入れやすいものなので、あなたのチームで活用できるか検討してみてほしい。
――「都度相談」に疲弊するリーダーたち
どんなにリーダーが優秀でも、日々の細々としたトラブルや相談ごとがゼロになることはない。部下から「質問があるんですが…」「ちょっといいですか?」と声がかかるたびに、「いま答えないと部下が困るし…」とリーダーがその場で答え、一緒に問題を検討する。そのやり取りが、いつの間にか30分、1時間と長引くことも珍しくない。
部下からすれば、「都度相談」は気がラクかもしれないが、それが当たり前になると危険だ。「質問をすればリーダーが答えてくれる」という受け身の姿勢が定着し、リーダーの負荷が高止まりすることになる。
期間を決めたマイクロマネジメントなら効果的だが、私が現場で見てきた限り、だらだら続く「都度相談」を引き受ける面倒見のいいリーダーは、長期的には疲弊してしまう。せっかく前章までのステップを踏んだのなら、部下がそのステップを逆戻りしないように、次は、自走を仕組み化していくことが重要となる。
――仕組みで質問を集約する_FAQドキュメントやフォーラムの導入
「都度相談」を脱却するためには、仕組みを使って部下の質問や相談をまとめて対応できる仕組みを構築する工夫が有効だ。具体的な仕組みの例を挙げてみよう。
① FAQ(よくある質問)ドキュメント
部下がよく質問する内容をリーダーや先輩がまとめ、「まずはここを見て」とルール化
FAQを更新可能なファイルや社内Wikiに置き、誰でも編集・追加しやすくする
② 週1回の質問タイム
「毎週○曜日の朝30分(または昼休み前、夕方など)は“質問コーナー”」と決める
部下はその時間までに疑問をまとめておき、リーダーは一度に答えられる質問に答える。これも今流行りの1on1を行う有効性の一つである。
③ ITツールによるQ&Aフォーラム
社内SNSやプロジェクト管理ツールに“質問チャンネル”を作成し、部下が投稿
ほかのメンバーが回答することも奨励し、リーダーが常に答えなくてもいい構造にする
これらの仕組みを徹底することで、部下が同じ質問を何度もしてくる無駄がなくなる。さらに、部下同士で「これ、前のFAQに似てるから参照しよう」と助け合う動きが生まれ、リーダー不在でも対処可能となる。
――質問フォーマットで「自分なりに考える」習慣をつける
質問対応の仕組み化のコツは、「質問をする前にこのテンプレに自分の考えを書いてきてね」と定めることだ。たとえば、A4一枚のシンプルなフォーマットに以下の項目を記入させる。
どんな問題が起きているのか(ファクト)
自分はどう考えているか(感情・仮説)
試したこと(過去にやった対策や調べた資料)
リーダーに質問したい具体的内容(例:「決裁をとっていいか」「優先順位をどうすべきか」など)
これにより、部下は質問前に自分で情報を整理し、ある程度の仮説を持ってくるため、リーダーは背景を一から聞かずに済む。部下も自然と自分で調べる力がつき、次第にリーダーを頼る頻度が減っていく。
――「週1回の質問タイム」のメリット
「週1回の質問タイム」を採用する場合は、次のようなメリットがある。
■時間の可視化
リーダーは一気に対応できるので、自分の他タスクをブロックせずに済む
■知識の共有
同じ疑問を持つ部下がまとめて学べるため、リーダーが同じ話をくり返さずに済む
■新たな問題を発見
質問が集中する領域は仕組みが弱いことを示唆する。そこを改善すればさらに問い合わせが減る
結果として、プレイングマネージャーが「部下への対応にいつも振り回される」事態から解放される。「集中的な時間」だけで部下の困りごとをカバーできるので、自分の仕事を計画的に進めやすくなるのだ。
京都市出身。大阪大学基礎工学部卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニア、国内外の販売促進技術に従事。2017年の創業以来、企業の高収益・高賃金を同時に実現する独自メソッドを開発し、シン・マーケットイン型経営実現のための付加価値戦略コンサルティングおよび人財育成事業を展開。「成果にコミットするコンサルティングファーム」を掲げ、多数のコンサルテーション実績を残している。大手企業コンサルティング実績として、売上2兆円超の企業や1兆円クラスの企業を複数、中堅IT企業を3年で年商45億円から75億円に成長させるなど、投資額以上の成果創出に定評がある。またエンジニアとコンサルタントの両面から、付加価値に繋がる生成AI活用の仕組みを伝えている。直近ではAIアバターを活用した営業トレーニングシステムを開発し、構造化された組織育成を実現するAI活用コンサルティングを提供開始。日経、プレジデント、NewsPicksやPIVOTなどメディアに出演、Forbes JAPANから世界の96賢人として選出。著書に10万部超『付加価値のつくりかた』など。